これといって行事がないゴールデンウィークですので、
昔書いたお話を載せておきます。 長いですので、イントロダクション以外、MORE機能で分割した先に本編を載せます。 (途中から読むとおもしろくないですので) ※ミュージックボールについて、興味をお持ちの方は、GOOGLE等で 検索してみてください。今では、販売も多く行われているようです。 ------------------------------------------------------------- 春をさがしに1 春をさがしに2 春をさがしに3 春をさがしに4 「春をさがしに」 みなさんは、ミュージックボールって知っていますか? 雑貨屋さんなどのリラクゼーションのコーナーにあります。 小さな金属でできた球体で、振るときらきらとした不思議な音が聞こえます。このお話は、このミュージックボールをモチーフにした、季節の移り変わりの物語です。 ~春をさがしに~ それは寒い雪の夜のことでした。 ルルとおばあちゃんはいつものように暖炉のそばの揺り椅子で、食後のお茶をいただいているところです。外はしんしんと雪が降り積もり、何の物音もきこえません。 「おばあちゃん、今日、学校で雪の結晶を見たのよ」 ルルは、まだ学校に入ったばっかりの小さな女の子だったので、こうやって自分が見たものを誰かに教えたくてしかたがないのでした。 「そうかい。じゃあ、ルルは雪がはじける音を聞いたのかい?」 「ううん、あんなに小さな氷のつぶだもの。何かにあたって音を出す前に、消えてなくなってしまうわ」 「なら、おばあちゃんがいいものを見せてあげよう」 おばあちゃんは、ゆっくりと立ち上がり、自分の引き出しから何かを大切そうに取り出しました。そっとルルのかわいい手のひらに乗せられたのは、金属でできた小さな球でした。 「耳に近づけて、ふってごらん」 ルルはおばあちゃんの言うとおりにしてみました。すると確かに、あの雪の結晶が光にあたってきらきらときらめくような音が聞こえます。 「すごいわ。どうしてこれ、溶けないの?どうして、こんな音がするの?」 「これには雪の魔女の魔法がかかっているんだよ。その時のお話、聞きたいかい?」 「うん、聞きたい」 「では、お話しようね。…あれはずっと昔のことだった」 そう言って、おばあちゃんは静かに話し始めました。 あれはずっと昔のことだった。おばあちゃんのおとうさんが、まだ小さな子どもだったころだよ。ある年、この地方を大変なできごとがおそった。本当ならもう春になるはずの時期になっても、春が来なかったのだ。 「それって大変なことなの?」 もちちん。ほとんどの日は外は吹雪だったから、人々はみんな家の中で過ごさなければならなかった。たった一人、トトという男の子を除いては。 その子はちょうど今のルルと同じぐらいの歳だったのだけれど、どんなにひどい吹雪の中でも必ず日に一度は家の外に遊びに行くような子どもだった。もちろんお母さんも最初はたいそう心配したけれど、トトがいつも夕ごはんにはもどってくるので、そうやかましくは言わなかったのだ。 おばあちゃんはここでふぅっと息を切りました。 その日は久しぶりにいい天気だった。といっても雪は二階の屋根の下まで積もっていたので、みんな天窓にはしごをかけて、そこから出入りしていたのだがね。 トトはいつものようにお気に入りのスキーをもって外に出た。辺りは一面雪でおおわれていた。いつもは見上げるほど大きな木が、今や足元にうまっていて、その場所には木があったしるしに、雪のコブがぼこぼこ盛り上がっているだけ、という、まさに一面の銀世界が、見渡すかぎり広がっていた。 トトははるか彼方まで続く雪原を前に何をしようかとちょっと悩んだが、そのうちにとびっきりワクワクするようなことを思いついたんだ。 「いったいこの冬はどこまで続いているんだろう……」 今日一日かけて、冬と春が入れ替わるところまでスキーで滑っていってみよう……それがトトのアイデアだったんじゃ。彼はさっそく家の中にもどり、リュックに雪よけの上着と、それにお母さんの作ってくれた、あったかいお弁当をいれて、小さなコンパスを片手に再び外に出た。 「お母さん、夕ごはんまでにはもどってくるよ」 そういって、一直線に南に向かって滑り出した。 「おばあちゃん、トトはどうして南に向かったの?」 「春は南からやって来るものだからだよ。暖かい風は南から吹いてくるだろう。先を続けていいかい?」 トトはとっても早く家を出たのだが、何時間滑っても、あたりの景色は変わらなかった。いや、反対に、行けばいくほどぐんぐん気温が下がって、晴れているのにどこからともなく小雪がちらつき出したほどだった。もうすでに、太陽は空の一番高い所にさしかかろうとしている。 「まずい、このまま先に進んでは、夕ごはんの時間に間に合わなくなってしまうな」 いよいよトトが思ったその時、目の前に家のようなものが見えてきた。はっきり家だとわからなかったのは、そのまわりだけまるでひっくり返したガラスのコップでふせたように、内側に猛烈な吹雪が吹き荒れていたからだった。 「いったいこれはどうしたんだろう」 トトは持ってきた予備の上着をひっかぶり、吹雪の中に一歩、足を踏み入れた。そこは思っていたよりもずっと寒く、しかも、トトが持っている一番あったかいコートを着てもまだ、冷え冷えとした。彼はお母さんが作ってくれたお弁当が凍ってしまわないように両腕の中にぎゅっと抱え込んで、ほとんど目も開けていられないような雪の中、一歩一歩前に進んでいった。
by stafy77
| 2006-05-02 10:10
| ひとりごと
|
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