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わくわく

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彼らはその原っぱで残された、最後の綿毛でした。
次に強い風が吹くのはいつだろうと、みんなわくわくしておりました。

1番目の種がいいました。
「もうすぐみんなお別れだね。でも、僕たちはどこに飛ばされるんだろう」
2番目の種が言いました。
「ふかふかの土がいっぱいあるところがいいなぁ。固い石の上はいやだよ」
3番目の種が言いました。
「私たちがどこに行くのか決めるのは風さんだけよ。私たち、みんな違ういろんな場所で大きくなるのよ。」
4番目の種が言いました。
「そうだね。それにしても、風さんはどうしたんだろう。忘れちゃってもうやって来ないのかな」

この言葉に種たちはみんな心配にになって、急にがやがややりだしました。でも、綿毛たちの近くの風はぴったりと黙り込んでしまっていたのでした。

そこに、人間の女の子が通りかかりました。
「まぁ!まだ綿毛が残ってるわ。」
彼女は喜んで、綿毛たんぽぽを手に持って、ふぅっと息を吹き掛けました。

種たちは、それぞれの思いを胸に秘めて、ふわりと青い空に舞い上がっていきました。
by stafy77 | 2006-05-12 12:15 | ひとりごと
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